高木厚生労働副大臣と面会

2018年9月19日

2018(平成30)年9月19日、gid.jpは、日本精神神経学会、GID(性同一性障害)学会と共に高木厚生労働副大臣と面会し、ホルモン療法の健康保険適用や就労環境の改善に関する要望書を提出いたしました。
面会終了後記者会見を開き、要望の内容や当事者の思いなどをマスコミのみなさんに訴え、記事にもなりました。
以下、ご報告いたします。

日時2018年9月19日 16:20~16:50
場所厚生労働省副大臣室
出席者
(敬称略)
高木 美智代(厚生労働副大臣)
谷合 正明(参議院議員・農林水産副大臣)
國重 徹(衆議院議員)
太田 順一郎(日本精神神経学会 理事・性同一性障害に関する委員会 委員長)
中塚 幹也(岡山大学大学院保健学研究科 教授、GID(性同一性障害)学会 理事長)
松本 洋輔(日本精神神経学会・性同一性障害に関する委員会 副委員長)
對間 望(日本精神神経学会 事務局)
山本 蘭(日本性同一性障害・性別違和と共に生きる人々の会 代表)
砂川 雅(日本性同一性障害・性別違和と共に生きる人々の会 運営委員)他
提出要望書
主な要望内容
  • 性同一性障害のホルモン療法に対する健康保険適用
  • 15歳未満の性同一性障害当事者に対するホルモンブロック治療に対する助成措置
  • 性同一性障害当事者に対する就労環境改善
<会談内容抄>

山本・太田・中塚
gid.jpおよび学会より提出済みの要望書を元に、性同一性障害当事者に対するホルモン治療の健康保険適用や就労環境の改善に関する要望内容を説明。
高木厚労副大臣
日本の薬事法と海外では異なる。また、ホルモン薬に対する企業からの申請も行われていない。
現在、平成28年に学会が提出した要望書に基づき、医療上の必要性が高いか検討している。
しかし、決め手となる情報が今も変わらずにない。厚労省としては、有効性・安全性を示す欧米の資料が必要。また、安全性はどうか?例えば、肝臓に対する負担や血栓など。厚労省としても道は険しい。
しかし、今後も厚労省もどういうことが出来るのかを考え、道を探し連携をとっていきたい。
次にホルモンブロック治療に対しての助成措置について、基本的に医療保険の適応とならない疾患に関しては保険適応とならない。海外の事例収集を踏まえ、検討していきたい。
最後に、性同一性障害当事者の労働環境改善に向けて、来年度の概算要求に当事者の実態把握を入れている。来年度調査事業を進め、しっかりと対応していきたい。
太田
日本精神神経学会等4学会からの要望は、昨年と同様になる。基本的にまずホルモン治療を行い性別適合手術となる。しかし今の制度では、乳房切除術以外はガイドラインに沿った治療を受けている当事者は健康保険が適用にならないという矛盾が生じている。
中塚
公知申請を行う作業を行っているが、ホルモン剤全体に対する論文はあるが個々の薬剤に対するものは見つかっておらず苦労している。厚労省として、もう少し緩和できないものか。
高木厚労副大臣
関係部署とよく相談していただき、どのように申請すれば良いか一緒に考えていきたい。
山本
文部科学省が、平成27年4月に発出した「性同一性障害に関わる児童・生徒に対するきめ細かな対応の実施等」によって学校における対応は大きく進んだ。企業に対する対応も同様に期待したい。まず実態調査を行うことは評価できる。ただ、特に就業に関しては性指向の問題と性自認の問題では異なるので、それを踏まえた上でお願いしたい。
高木厚労副大臣
それについては担当官もメモをしている。検討させていただく。
谷合議員
党としてもホルモン療法の保険適用を推進している。しっかり検討いただきたい。
国重議員
法務省より、性同一性障害MTF当事者の留置所での女性下着着用は認められているが、刑務所での女性下着着用は認められておらず問題となっている。今後法務省と連携を取り、話を詰めていきたい。
中塚
受刑者の下着問題に加え、留置所や刑務所に入っている当事者のホルモン治療に関しても、健康保険が適応となっていない為正式な医療と認めて貰えず、当事者に不利益な状態になっている。
ホルモン療法が健康保険適用になれば、それも解消される。
砂川
沖縄県のような地方では、家族や職場にカミングアウトすることすら難しい。もしカミングアウトしたら、大変なことになる。
職場での理解を得られやすくする為に、是非、何らかの形で対応して頂きたい。
高木厚労副大臣
先日、「T」の当事者から相談を受けた。やはり、砂川さんからお話があったように、家族や職場へのカミングアウトの件で大変悩まれており、本当に難しい問題だと思う。
山本
厚労省が前向きに取り組んでくださる意向であることに安心した。1日も早くホルモン療法の保険適用が実現するようお願いしたい。
高木厚労副大臣
要望内容について、厚労省としてもしっかり対応してきたい。

高木大臣との会談中の写真
高木副大臣と会談中の様子
記者会見の写真
面会後に行った記者会見

会談内容にありますように、ホルモン療法の健康保険適用に関しては、厚生労働省としても前向きに捉えていただいていることが確認できたのは成果でした。
また、申請についてもいろいろ相談に乗っていただけるようです。
あとは、学会側がどれだけ早く申請できるのかというところですが、論文やデータが揃わないなど難渋しているようです。残念ながらこれについては当事者が関われるところではないので、学会に頑張っていただくしかありません。
就労問題に関しては、調査を行う予定という回答をいただけたことは大きな進展といえるでしょう。過去に学校における対応が進んだのも、文部科学省がまず実態調査をを行ったからです。調査を機に指針や対応マニュアルの作成などが行われれば、当事者の就労環境に大きな改善が見込めます。
今後の展開に期待がもたれますが、中身のある調査になるよう、またLGBTというような括りにされてしまわないようにしっかりとかかわってまいります。